2026.10.15

平成すぎるし令和すぎる。今月の気になるWEBサイト

すっかり秋らしくなってきました。今月も、私(大道)が個人的に気になったサイトを、つくる側の目線で紹介していきます。

今回は、青森県五所川原市にある「わくわく酒場スキちゃん」の公式サイト。懐かしさと面白さで気づくとサイトを隅々まで見ていました。インターネットが好きな人には、ぜひ一度見てほしいサイトです。

今回ご紹介するのはこちら。

「わくわく酒場スキちゃん」公式サイト。

わくわく酒場スキちゃん 公式サイト

平成だと思っていたら急に令和、そしてまた平成に…

星の飾り、青いリンク文字、中央にまとまったレイアウト。入口は、懐かしい「ホームページ」そのものです。

ところが下へ進むと、大きな料理写真に、たっぷりの余白、スクロールに合わせた演出が登場。さっきまで平成にいたのに、急に令和へ連れてこられました。時代の移動が早い。

面白いのは、古い見せ方と今っぽい見せ方の両方があること。入口との落差によって、普段見慣れた大きな文字や写真まで、少し大げさで面白く見えてきます。見せる順番によって、同じ表現の印象も変わるんですね。そして、この見せ方がひとつのページでつながっていることも興味深いです。「この先どうなるの?」と、ついスクロールしたくなる構成ですね。



デザインと言葉のギャップが面白い

大きな文字やたっぷりの余白など、今のブランドサイトで見かけるような表現が登場します。一方で、寿司の紹介には「握る。」「そして、離す。」という言葉が。意味深に見えてとても当たり前ですね…。
あとかなりスクロールさせられます。わざとでしょうか…。

この、見せ方と言っていることのギャップが面白いところ。何気ない一文も、大きく堂々と置かれることで、思わずツッコミを入れたくなります。こうしたギャップがあちこちにあります。今っぽいサイトで見かける表現が、ここでは笑いを生むためにも働いているように感じました。

さらに、スクロールの案内文にまで同じ調子が続きます。大きな見出しだけでなく、小さな説明にも「このサイトの話し方」がある。だから、次は何が書いてあるんだろうと、細部まで読みたくなるんですよね。

次は何が書いてあるんだろうと、ほかの料理の説明まで読みたくなる。デザインとコピーの組み合わせが、読み進めるきっかけになっていると感じました。



令和に出会う、カウンターと工事中

入口には「あなたは○人目のお客様です」というアクセスカウンターもあります。思わず数字を確認しました。これは、キリ番を探したくなるやつでは……。

キリ番とは、10000やゾロ目などの特別な番号のこと。昔の個人サイトでは、踏んだ人が掲示板で報告したりしていました。数字がひとつあるだけで、サイトに「訪ねてきた」感覚が生まれるのが面白いです。

さらに掲示板を開くと、工事中の表示と「ただいま準備中です」の文字。そこまで忠実に…。色や書体だけでなく、当時のホームページのお約束まで含めて、懐かしい空気がつくられています。

カウンター、店長のひとこと、最後の「また来てね」。こうした要素があると、サイトを見ることが、誰かの場所を訪ねることのように感じられますね。途中で画面が今っぽく変わっても、最後にはまた個人のホームページのような距離感に戻ってくる。その親しさや懐かしさも、このサイトの印象に残る部分でした。



最後には、お店の人が気になってくる

手羽先の紹介では、青森に「世界の山ちゃん」がないので、憧れから想像してつくっているという話が出てきます。寿司の説明には、食いしん坊なのでシャリを多く握ってしまうこともある、と。

商品の紹介として簡潔にまとめるなら、削られそうな話です。でも、私はここで一番、お店に興味が湧きました。

どんな味か、どんな素材かに加えて、「なぜこれをつくったのか」「つくる人は何を考えているのか」が伝わってくる。料理写真で食べたい気持ちが生まれ、文章でその人のお店に行ってみたくなる。少し脱線した話が、このお店を覚える理由になっていると感じます。

営業時間や予約方法も載っていて、興味を持ったあとに必要な情報を確認できます。地図が少し引かれすぎですが…。面白かったあとに、ちゃんと「行ってみたい」につながっていますね。そこまで含めて、印象に残るサイトでした。



Gear8でも

私が今回このサイトを紹介したいちばんの理由は、このサイトを作ったお店の人は一体どんな人なのだろう、と強く興味を持ったからです。今っぽい演出の中でも、同じ人が同じ調子で話しかけてくるようなサイトでした。またその言葉が、ばらばらに見えるデザインをひとつのお店のサイトとしてつないでいるようにも感じました。

サイトをつくるとき、情報をわかりやすく整理することは大切です。ただ、その過程で、取材中に聞いた面白い話や独特な言い回しまで、無難な紹介文に整えてしまうことがあるかもしれません。今回のサイトは、そうした言葉にこそ、そのお店を覚えてもらう力があると気づかせてくれました。

例えば、店主やスタッフとの会話も魅力になっている飲食店や宿泊施設なら、メニューやプランの紹介に、本人が語る短いエピソードを添える。「おすすめです」だけでは伝わらない、選んだ理由や思い入れを見せられそうです。

採用サイトでも、社員の話を「風通しのよい職場です」とまとめる前に、そう感じた具体的なやり取りを残してみる。仕事内容や条件に加えて、一緒に働く人の話し方が見えれば、応募する人が職場の雰囲気を想像する助けになると思います。

もちろん、営業時間や予約方法、募集条件など、正確に伝える情報はきちんと整理する。そのうえで、どこにその人たちの言葉を残すかを考えることが、提案できる工夫なのだと思います。

今っぽいデザインを取り入れるときにも、「この言葉は、ほかの会社に置き換えても通じてしまわないか」と、一度立ち止まってみたいです。打ち合わせで思わず笑った話や、本人には当たり前のこだわり。そういう小さなものを拾い、サイトに残せるデザイナーでありたいと思いました。


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