だんだんと日が長くなり、仕事帰りの空がまだ明るいことに少し得した気持ちになる今日この頃です。
今月も、私(大道)が個人的に気になったサイトを紹介していきます。
つくる側の視点で気になったウェブサイトを、つくる側の目線で少しずつ言葉にしていくこの企画。
第六回目です。今回も対談形式でサイトを取り上げていきます。
今回ご紹介するのはこちら。
まんが日本昔ばなし【公式サイト】
「昔、むかし」から始まるWEBサイト
まほ:このサイトは見つけたときから印象的でした。「このサイトでは音楽が流れます。再生しますか?」と聞かれて、そのあとに「昔、むかし、あるところに…」と始まるんですよね。
ひなこ:普通の作品一覧サイトとは、入り方が全然違いますよね。メニューやコンテンツをすぐに見せるのではなく、昔ばなしを聞くときの定型文から始まる。
まほ:サイトを開いたというより、物語の入り口に立ったような感覚でした!
ひなこ:昔ばなしって、「昔、むかし」という語りを聞いた瞬間に、誰でも「あ、始まるな」ってわかるじゃないですか。その感覚を、WEBサイトの最初の体験として使っているんだと思います。
まほ:音を再生するかどうか、最初に自分で選べるのもいいですよね。
ひなこ:そうですね。世界観を強く見せつつ、音を出せない環境の人にも気遣いがありますよね。演出を優先しすぎず、見る人に選択肢を渡しているところも丁寧だなと思いました。

懐かしいのに、古く見えない
まほ:「まんが日本昔ばなし」の絵を見ると懐かしさを感じるんですけど、サイト全体はかなり現代的ですね。
ひなこ:作品そのものが持っている手描きの温かさは残しながら、レイアウトや文字の使い方はすごくすっきりしていますよね。
まほ:昔の作品だからといって、和紙や筆文字をたくさん使うような、いわゆる「昔風」のデザインにはしていないんですね。
ひなこ:そこが面白いと思いました!日本の昔ばなしを扱うと、和柄や明朝体、墨の質感のような表現に寄せたくなりそうですが、このサイトは作品の絵自体を主役にしています。
まほ:装飾で「昔」を説明しすぎていない感じがありますね。
ひなこ:はい。もともとこの作品群には、色も形も、独特の味がありますよね。その魅力を邪魔しないように、サイト側はシンプルに徹しているように見えました。
まほ:素材が強いと、つい周りも盛りたくなりますけど…。
ひなこ:盛りたくなりますね…。でも、何を足すかだけでなく、何を足さないかを決めるのもデザインなんだなと思いました。
同じ形のカードが、一つもないように見える
まほ:作品が並んでいる画面も楽しかったです。サムネイルを眺めているだけで、知らない昔ばなしがたくさんあることに気づきました。
ひなこ:「桃太郎」や「かぐや姫」のような有名な作品だけでなく、「あずきとぎ」や「たのきゅう」など、聞いたことのないタイトルも同じように並んでいますよね。
まほ:作品数は多いのに、図鑑やデータベースみたいな固い印象になっていません。
ひなこ:それぞれのサムネイルに、登場人物の表情や場面の色がそのまま出ているからだと思います。レイアウトにはルールがあるけれど、絵の個性によって、一つひとつ違うカードに見えますね。
まほ:統一感をつくりながら、全部を同じに見せないということですね。
ひなこ:そうですね。WEBデザインでは、カードのサイズや文字の位置をそろえることばかり考えてしまいがちですが、素材ごとの違いをどう生かすかも大事なんだなと感じました。
まほ:絵が均一じゃないことを弱点にせず、むしろサイトの楽しさにしている感じがします。
ひなこ:作品が長い年月の中でつくられてきたからこそ、絵柄や色、構図にも幅がある。そのばらつきを消さずに見せていることが、文化のアーカイブらしさにもつながっている気がします。

物語を「タイトル以外」から探せる
まほ:絞り込み機能も、かなり細かいですよね。登場人物だけでも、いぬ、うさぎ、たぬき、おじいさん、おばあさん、天狗、妖怪、鬼……と、たくさんあります。
ひなこ:ジャンルも面白いですよね。「アクション」や「ホラー」だけでなく、「ほっこりする話」「不完全燃焼」「スカッとする」「閲覧注意」まである。
まほ:「今日は不完全燃焼の話が見たい」と思うこと、あるのかなと思ったんですけど、逆にちょっと押したくなります。
ひなこ:わかります。一般的な動画サイトなら、作品名や人気順、年代などで探すことが多いと思います。でもここでは、登場人物や物語を見たあとの感情からも選べるんですよね。
まほ:「いまの気分にそっと寄り添う昔ばなしを集めました」という言葉ともつながっていますね。
ひなこ:そうですね。昔ばなしを、勉強のために見る古い作品ではなく、今の自分の気分に合わせて出会えるコンテンツとして捉え直しているんだと思います。
1,470話を、遠い数字にしない
まほ:ABOUTページに「1,470の物語」と書かれていて、そんなにあるんだと驚きました。
ひなこ:かなり多いですよね。しかも、それぞれに日本各地の自然や暮らし、風習、考え方が含まれていますし、情報の密度もあります。
まほ:そう聞くと、アニメ作品の一覧というより、日本文化の記録みたいに見えてきます。
ひなこ:サイトでも「日本を知るための、やさしい教科書」と表現されています。昔ばなしを懐かしい番組として紹介するだけではなく、日本各地の価値観や暮らしが残された文化のアーカイブとして位置づけているんですよね。
まほ:でも、最初から文化遺産として真面目に説明されていたら、あんまり手出ししないかも…。
ひなこ:そうなんです。このサイトは、先に絵や音、作品を探す楽しさに触れられる。そのあとでABOUTページを読むと、「楽しかったものが、実は大切な記録でもあったんだ」と気づけます。
まほ:情報の重さを、順番で調整しているんですね。
ひなこ:はい。「これは貴重な文化です」と強く言い切るだけではなく、ユーザー自身が作品に触れて、その価値に気づける構成になっていると思います。
一覧表示とグリッド表示で、見る姿勢が変わる
まほ:作品一覧を、LISTとGRIDで切り替えられるのも気になりました。
ひなこ:同じ作品でも、表示方法が変わると見方が変わりますよね。グリッドでは絵を直感的に眺められて、一覧表示ではタイトルやタグを比較しやすい。
まほ:私は最初、グリッドで絵を見ながら気になるものを探しました。
ひなこ:私もです。知らない作品が多いから、まずは絵の雰囲気から選びたくなりますよね。一方で、目的の作品や特定のジャンルを探す人には、情報を整理して見られる一覧表示が便利です。
まほ:探し方そのものを選べる機能なんですね。
ひなこ:そう思います。子どもと一緒に絵から探す人もいれば、懐かしい作品名を探す人もいる。いろいろな世代や目的の人が来るサイトだからこそ、一つの見方に限定していないのかもしれません。
まほ:ユーザーに合わせてページを分けるのではなく、一つの画面の中で見る方法を選べるようにしていますよね。
ひなこ:大きな仕組みを増やさなくても、小さな切り替え一つで体験の幅を広げられる。こういうUIは参考にしたいです。
英語が添えられることで、日本の外へ開いていく
まほ:作品タイトルに英語が添えられているのも印象的でした。「桃太郎」の下に「Momotaro, the Peach Boy」と表示されていますよね。
ひなこ:サイト全体にも英語が使われていて、日本国内だけではなく、海外へ届けようとしていることが伝わります。
まほ:日本らしさを前面に出しているのに、閉じた印象がないですよね。
ひなこ:そうですね。日本文化を海外向けに見せるサイトでは、海外の人にわかりやすくするために、ビジュアルを少し変えたり、いわゆる「和風」を強くしたりすることもあると思います。
まほ:でもこのサイトは、作品そのものの姿をあまり変えていない。
ひなこ:誠実だなと思いました。海外向けに別のキャラクターをつくるのではなく、もともとの絵と物語を見せながら、英語を添えて入り口を広げている。
まほ:翻訳が、世界観を海外向けに塗り替えるためではなく、作品まで案内するために使われている感じですね。
ひなこ:はい。日本らしさを説明しすぎるのではなく、まず物語に触れてもらう。その姿勢が、サイト全体のシンプルなデザインにも表れているように感じました。

子どものころとは違う話が気になる
まほ:私は子どものころ、「桃太郎」や「金太郎」みたいな有名な話しか意識していなかったんですけど、今見ると「耳なし芳一」や「雪女」みたいな、少し怖い話が気になりました。
ひなこ:わかります。大人になってから見ると、同じ昔ばなしでも感じ方が変わりそうですよね。
まほ:「大人向け」や「切ない話」「教訓が強い話」みたいなタグを見ると、昔ばなしって子どもだけのものではないよなと思いました。
ひなこ:このサイトは、子どものころに見ていた人が懐かしむだけでなく、大人になった今、もう一度作品と出会い直すきっかけにもなっていますよね。
まほ:親子で見る人もいれば、一人で昔の記憶をたどる人もいそうだし、全く見たことないけれど興味持つ人もいそう。
ひなこ:世代によって入口は違っても、同じ作品の中で出会える。それも「まんが日本昔ばなし」というコンテンツの強さだと思いますし、その広がりを受け止められるサイトになっていると感じました。
Gear8でも
今回取り上げた「まんが日本昔ばなし【公式サイト】」は、長く親しまれてきた作品をただ並べるのではなく、現代のユーザーがもう一度出会うための入り口をつくり直したサイトでした。
「昔、むかし」という語りから始まる導入、音を使った空気づくり、作品の絵を主役にしたシンプルなレイアウト。
さらに、登場人物や地域だけでなく、「ほっこりする話」「不完全燃焼」「スカッとする」といった感情から物語を探せる情報設計によって、1,470話という大きなアーカイブを身近なものにしています。
対談の中でも話題に上がりましたが、昔からあるものを未来へ残すために、必ずしも中身を新しくつくり変える必要はないのかもしれません。
そのものが持つ魅力を見つめ直し、今の人が触れやすい入り口や、探しやすい道筋を考える。
そうして出会い方をデザインし直すことで、これまで知らなかった人や、しばらく離れていた人にも届くものになるのだと思います。
gear8でも、すでにある商品やサービス、長く続いてきた企業の中にある魅力を整理し、今のユーザーにどう届けるかを一緒に考えていきます。
大切にしてきたものはあるけれど、どこから説明すればよいかわからない。
情報が多く、どう整理すれば魅力が伝わるのかわからない。
そんな段階でも、まずはお話を聞きながら、その企業やサービスらしい入り口を探していけたらうれしいです。
もし今回の対談を読んで、今あるものの見せ方や、これからの残し方について少しでも引っかかるものがあれば、いつでも気軽に相談してください。






































