2026.04.27

スペックではなく哲学を語る、今月の気になるWEBサイト

ようやく暖かくなってきましたね…今月も、私(大道)が個人的に気になったサイトを紹介していきます。

つくる側の視点で気になったウェブサイトを、つくる側の目線で少しずつ言葉にしていくこの企画。
第四回目です。今回も対談形式でサイトを取り上げていきます。
今回ご紹介するのはこちら。

貝印 KAI Design Dept.

https://www.kai-group.com/global/design


切れ味、という見えないものをデザインする

まほ:貝印って、包丁やカミソリのメーカーですよね?製品サイトとは別に、こういうデザインに特化したサイトがあるんですね。

ひなこ:そうなんです。「切れ味で、暮らしをえがく。」というテーマで、単にモノを売るだけじゃなく、「道具をどう考えて作っているか」というものづくりの哲学を伝える場になっています。

まほ:「切れ味」って物理的な機能のことかと思ってたんですけど、サイトを見ていると少し違う意味に感じてきました。

ひなこ:そこが面白いところです。物理的な鋭さだけではなくて、暮らしを良くするための「研ぎ澄まされた発想」や「美学」みたいなものまでを、まるごと「切れ味」という言葉に込めているんだと思います。

商品の「裏側」を言葉で見せる

まほ:気になったのが、キャッチコピーです。ボウルの紹介で「丸を疑い、三角を迎えよう。」って書いてありました。

ひなこ:あれ、すごくいいコピーですよね。普通なら「注ぎやすい形状です」と機能面だけを説明しがちですが、デザイナーがどういう問いを立てたのか、その思考のプロセスをそのまま見せているんです。

まほ:なるほど。確かにこのコピーだとなぜその形になったのかがスッと入ってくるかも。

ひなこ:はい。完成した見た目を見せるだけじゃなくて、「課題解決のプロセス」自体をデザインの魅力として伝えているのが、このサイトの大きな特徴だと思います。

1ミリのこだわりを伝える空気感

まほ:全体的に、すごく研ぎ澄まされた印象を受けました。余白の取り方とか、配置とか。

ひなこ:サイト内に「たった1ミリでも、美しく。使いやすく。新しく。」という言葉がありましたよね。刃物って、コンマ何ミリの違いで使い心地が変わるシビアな世界なんです。

まほ:その緻密さを、WEBの画面上でも体現している?

ひなこ:そうですね。写真のシャープさや、無駄のないレイアウト、文字の置き方などのUIから、その「緻密さ」を無意識に感じ取れるように設計されている気がします。企業の117年の歴史と美学が、このサイトの空気感そのものに表れています。


心地よい緊張感をつくる動き

まほ:サイトを操作していると、なんだか集中して見入ってしまうような感覚があります。写真がふわっと出てきたり、スクロールに合わせて文字が動いたりしますよね。

ひなこ:確かに。このサイトのアニメーションは、単に豪華に見せるためではなく、「刃物の鋭さ」や「精緻さ」を表現するために計算されていますよね。

まほ:確かに、デザインだけでなく動きもすごくシャープです。

ひなこ:例えば、画像がふわっと現れるときの速度や、要素が重なり合いながら動くパララックス(視差効果)の使い方が、とても丁寧なんです。速すぎず、でも重すぎない。この間の取り方が、貝印らしい「心地よい緊張感」を生んでいます。


冷たさではなく「人への思いやり」

まほ:かっこよくて緻密なんだけど、冷たい感じはしませんでした。

ひなこ:そこがこのサイトのもう一つの凄さです。刃物や工業製品って、どうしてもソリッドで冷たい印象になりがちなんですが……。

まほ:「だれかのことをおもったらあたらしいかたちにたどりつく。」っていう言葉もありましたね。

ひなこ:まさにそれです。根底にあるのは「使う人への思いやり」なんですよね。だから、シャープな中にも、どこか体温や生活の匂いを感じさせる写真や言葉遣いが選ばれているんだと思います。冷たい金属の道具の裏にある、温かい視点が見えてきます。

日常の道具を見る目が変わる

まほ:このサイトを知ったあと、洗面所にある自分のカミソリやツメキリを、まじまじと見つめちゃいました…。

ひなこ: このサイトの本当の狙いはそこだと思います。「なんかカッコいいな」で終わらせず、日常の道具を見るユーザーの視点を変えてしまう。

まほ:ただの道具じゃなくて、誰かが必死に考えた「デザイン」なんだって気づきました。

ひなこ:はい。商品を買ってもらう前の段階として、「貝印のものづくりに対する信頼」を、確実につくっている。ブランディングとして非常に美しいサイトだと思います。

Gear8でも

今回取り上げた『貝印 KAI Design Dept.』は、商品のスペックを羅列するのではなく、「なぜその形になったのか」という哲学や思考のプロセスを伝えるサイトでした。

機能美の裏側にある、1ミリへのこだわりや人への思いやり。
理解してもらうより先に、「日常の道具への眼差しが変わる感覚」をつくっている点が印象的でした。

対談の中でも話題に上がりましたが、こうしたサイトは見た目の美しさやユニークさだけで成立しているわけではありません。背景にある考え方や、その企業がどんな姿勢で「もの」と向き合っているのかを丁寧に言語化し、掘り下げた結果として、あの形になっているように感じます。

gear8でも、まさに今回の事例のように、見た目を整える前の段階から一緒に考えることが多いです。
まだ方向がはっきりしていなくても大丈夫なので、「こういうことできるのかな?」くらいの温度感でも、気軽に話してもらえたらうれしいです。

正解を決めるというより、話しながらお互いにわかってくることも多いので、もし今回の対談を読んで少しでも引っかかるものがあったら、いつでもふらっと相談してください。


Facebook
Twitter