2026.09.30

AI時代だからこそ「現場」へ。那須川氏を招いた社内勉強会レポート

Yusuke Hatano

ディレクターの秦野です。
先日、サンフランシスコを拠点にAI関連事業に取り組まれている那須川さんを講師にお招きし、社内でAI勉強会を開催しました。
私自身、今年に入ってからChatGPTやClaude、NotebookLMなどを、仕事でもプライベートでもいろいろ試しています。サバティカル休暇中には、DJの練習相手のような使い方もしていました。

ただ、今回の勉強会で中心になったのは、便利なツールやプロンプトの話ではありません。AIを前提にしたとき、組織に何を残し、人はどこで仕事をするのか。ディレクターとして考えさせられる話が多くありました。

今回は、勉強会の中で特に印象に残ったことを、自分なりに振り返ってみたいと思います。

サンフランシスコでは、AIの使い方より「文脈」が重視されている

最初に驚いたのは、世界のAI活用についての話でした。
那須川さんによると、欧米の多くの地域と日本を比べても、AIの活用レベルには、私たちが想像するほど大きな差はないそうです。ただし、サンフランシスコ周辺は、その中でもかなり特殊な場所になっているとのことでした。

そこで重視されているのは、どのツールを使うかという話だけではなく、日々の仕事で生まれる文脈や暗黙知を組織に蓄積し、必要なときにAIが探して使える状態をどう作るか。いわゆる「クエリアブル・カンパニー(Query-able Company)」という考え方です。

業務の進捗、クライアントのちょっとした反応、スタッフ同士の会話。こうした一次情報を残しておけば、AIへ質問するときにも、その会社や案件の事情を踏まえた答えを得やすくなります。
AIが「どう作るか」を担えるようになるほど、人間は「何を解決するのか」を考える必要がある。そのためには、普段の仕事で得た情報を、あとから使える形で残しておくことが欠かせません。これは、GEAR8の仕事にもそのまま当てはまる話だと思いました。

完成したWebサイトやデザインだけではなく、なぜその判断をしたのか。クライアントがどこで迷い、何を気にしていたのか。そうした過程まで残しておくことで、AIにもチームにも使える知識になっていきます。

PCの前の作業が減るほど、現場へ行く意味が大きくなる

一つ考えさせられたのが、これまで若手のエンジニアやデザイナーが経験を積むために担ってきた作業の一部が、AIに置き換わり始めているという話です。
経験のある人が、判断の背景や条件をきちんとAIへ渡せば、コードやデザインのたたき台は短時間で出てきます。Figmaやエディターに向かって手を動かす時間は、これから少しずつ減っていくのかもしれません。

一方で、若手がどこで経験を積み、判断の材料となる文脈を身につけるのか。これは、会社として考えていかなければならないテーマです。

人はどこで経験を積むのか。

那須川さんが話していたのは、外へ出て、人と話し、現場を自分の目で見ることの大切さでした。
AIは、記録されたデータを整理したり、そこから案を作ったりすることは得意です。ただ、クライアントが言葉にしきれなかった迷いや、現場で感じる温度感までは、今のAIだけでは拾いきれません。

私自身、長くディレクターとしてクライアントと話してきました。打ち合わせの中で出た何気ない一言から、当初とは違う提案につながることもあります。メールや資料だけでは分からなかった事情が、実際に訪問して初めて見えることもあります。

AIを使えば、PCの前でする作業は短くできる。そのぶん人に会い、現場を見る時間を増やす。今回の話を聞いて、これからのディレクターに必要なのは、そういう時間の使い方なのかもしれないと感じました。

一人でできる時代に、あえてチームで働く

勉強会の終盤には、AI時代にチームで働く意味についても話が広がりました。
AIが実作業の多くを担い、一人でできることが増えていけば、最終的には誰もが「ソロファウンダー」のように仕事を完結できるのではないか。そんな問いです。

那須川さんは、一人でできることでも、あえてチームで働くことを選んでいると話していました。AIによって仕事の時間が短くなったとしても、残った時間を誰と、どう使うのか。ビジョンを話し、同じ場所で文化に触れることは、効率だけでは測れない心の支えや、生きがいにもなるという話が印象に残っています。
社内では最年長になった自分にも、この話はよく分かります。
一人で進めた方が早い場面はあります。それでも、クライアントのところへ足を運び、社内でああでもない、こうでもないと話しながら一つのものを作る。少し遠回りに見える時間が、仕事を続ける理由になることもあります。

サバティカル休暇を終えてオフィスへ戻ったとき、仲間と仕事の話をすることが素直にうれしいと感じました。あの感覚は、作業時間を短くすることとは別のところにあります。

AIを使いながら、現場の情報を残していく

今回の勉強会を通して、AIを使うことと、現場を大切にすることは反対ではないと感じました。
AIに任せられる作業は任せる。そのぶん、クライアントの話を聞き、現場でしか得られない情報を持ち帰る。そして、個人の経験で終わらせず、チームで使える形にして残していく。

AIを導入するというと、つい新しいツールや機能に目が向きます。けれど実際には、日々の仕事で得た文脈をどう残すか、人がどこへ情報を取りに行くかという、地道な部分が大切になりそうです。

私自身、まだAIを試している途中です。便利なところは使いながら、現場の空気や、仲間と一緒に考える時間も手放さない。そのバランスを、これから実際の仕事の中で探していきたいと思います。

Facebook
Twitter

Yusuke Hatano

1975年福岡に生まれて、横浜で育って、今は北海道在住です。大学卒業後、PCインストラクターとなり北海道エリアの立ち上げで札幌に転勤してきました。その後、その会社を退職したものの、そのまま札幌に移住しました。 ウェブの世界に興味を持ったので、仕事をしながらデジタルハリウッド札幌校でウェブサイト構築について勉強。卒業後、いくつかのウェブメディア構築運営に携わり2015年に友人に紹介してもらったGEAR8に入社して現在に至ります。 家に帰ると娘2人の父親として奮闘中。最近は自宅のスマートホーム化に目覚め、日々新しいガジェットを研究しています。